子育てと家庭を優先した私に、キャリアアップの道はなかった


あの頃、私は選んだ。「子供と家庭を優先にしたい」と。
20代前半、仕事がようやく楽しくなってきた頃に結婚。その後、数カ月後に妊娠がわかりました。妊娠初期から”つわり”がひどく、会社を早退・欠勤することも増えました。
妊娠は嬉しかったが、それと同時に思ったのです。「これからどうなるんだろう、私の仕事は?」
今から20年前に、出産・育児とキャリアを両立させている女性はほとんどいませんでした。結婚したら会社を辞める人が多かった。
産後休暇、育児休暇を取得する旨、職場責任者に伝えると少し顔が曇った。「同じ部署に戻れないと思っていてくれ」そう言われました。
でもその時は「仕事やキャリアよりも、子どもと家族を大事にしたい」と思っていた。
復帰後に感じた、目に見えない「壁」
産休・育休を経ていざ復帰1カ月前に、会社の人事との面談があった。そこで職場異動になることを聞いた。「今一番忙しい部門に行ってくれ」と言われて断れるはずもない。
実母は掛け持ちで働いていたので頼ることができない。いざという時に子どもの面倒を見てくれる人が近くにいないことを知った人事担当者は、遠回しに「このまま会社を辞めればどうだ?」という嫌味を延々と話してきた。
私は何を言われても「会社をめます」とは言わなかった。面談が終わったら、泣きながら帰ったのを今でも覚えている。悔しかった。「親が働いていると、子どもはろくなことない!犯罪者になっても会社は知らんぞ!」そう言われた。
実際に異動した先の職場は、とても忙しかった。最初の1カ月は、子どもの発熱が続いた。「使えないやつがいる」と同じ女性の先輩に言われたり、肩身の狭い思いをした。
仕事も教えてもらえず、ただ座っている時もあった。その後は、パートさんがやっているような仕事をさせられた。「いついなくなるか分からんやつに責任ある仕事はさせられない」と言われた。
「仕事を辞めたい」と思ったことも数知れず。でも、子どもの寝顔を見ればそんなこと言ってられないと思っていました。
チャンスは平等ではないという現実
職場は、ほぼ女性だけ。社員で小さな子供がいるのは私だけ。パートさんからは「何で社員を辞めなかったのか?」「子どもがかわいそう」と毎日のように言われた。
その頃は、会社の制度として”時短勤務”が無い時代だった。出社はギリギリだが、定時になったら速攻で帰宅する。もちろん、職場でもいい顔はされない。
忙しい職場なのに、私は休日出勤は出来ない。残業もできない。「働けるやつが欲しいって言ったんだけどな」、職場でそう大きな声で言われたこともある。
何かにつけて「子どもがいるから無理だよね」と、それが戦力外通告だったのでしょう。子どもがいる人=仕事にやる気がない人、ということでしょうか。悔しかったです。いつの頃からか「仕方ない」と諦めていました。
同僚女性で、祖父母に子供を任せて、仕事優先でキャリアを積んでいる女性もいた。そういう人と比べられるとツライ。
「悔しい」という感情を、誰にも言えなかった
同僚どころか、後輩がどんどん昇進していくのを見て、心の中にわいてきた感情。それは「よかったね」という祝福の気持ちと、押し殺してきた「悔しい」という気持ち。
「私は何をしてきたんだろう?」育児に時間を割いた分、私は”取り残された人”になってしまったのだろうか?
それでも、家では母親としての役割がある。弱音を吐いたところで「それが母親ってもんでしょ」と片付けられるのがオチ。
誰にも本音を言えず、自分の中にぐるぐると感情が渦巻いていました。
子どもがくれた「意味」の再発見
そんなある日、ふと子供が言いました。「ママは、いつもおしごとがんばっていてすごいね。えらいね」…その一言で、涙が止まらなくなりました。
そうだ、私は子どもにとって唯一無二の存在なんだ。この子が私の頑張りをちゃんと見ていてくれる。
昇進や評価、そういった”社会的な成功”は確かに大切。でも、それだけがすべてじゃない。「ママみたいになりたい」って言ってもらえるように、胸を張って生きたい。そう思えるようになったのです。
それでも私は、夢を諦めない
入社してから今まで、色んなタイミングで職場異動を数回経験してきました。多分…このまま定年まで今の職場かなと思います。
下の子が大学で家を出たタイミングが、子育て終了!でもその頃には、同僚の男性は部長、課長に昇進していた。私はというと、何の職制もない一般社員のまま。
キャリアへの機会はありませんでしたが、子ども2人が社会に出るところを無事に見届けることができることができました。それが何より!
今は、女性活躍の動きが後押しをしており、キャリアへの道筋ができていたり、20代~30代の女性がバンバン昇格するチャンスがある。とても羨ましい。
今の私には、キャリアへの道はなくなったが、今まで色々経験したことを、これからの職場の働きやすさに繋げていきたいと今は考えている。
男性社員が育児休暇をとる時代ですし、これからは私が職場でサポートする立場です。
おわりに
育児と仕事の両立は、想像以上に大変で、簡単な言葉では語れません。でも、それでも生きていく。子どもとともに成長していく。
その過程にこそ、人生の深みがあるのだと思います。
私はまだまだ、歩いている途中。
これからの人生、もっと自分らしく、悔いのないように進んでいきたいと思います。
だって、自分の人生を「会社の仕事」だけに支配されたくありませんから。