子どもが巣立ったあと、夫婦はどうなる?!

~静かになった家の中で気付いたこと~
「お弁当、もういらないから」その一言から始まった、我が家の静かな変化。
長男が大学進学で家を出た。毎日のお弁当作り、部活の送り迎え、進路の相談…。子ども中心だった生活が、ふっと終わりを迎えたのです。
ポッカリと時間が空いたキッチンで立ち尽くしながら「あれ?私、今日は何をすればいいんだろう」と思いました。そして、その視線の先には、同じく静かに新聞を読む夫の姿。
その時、ふと沸き上がった気持ち。それは「これから夫とどうやって過ごしていけばいいのだろう」とう不安でした。
■「子育て」という共同作業の終了
長い間、私たち夫婦は”子育て”という共通の目標に向かって、協力し合いながら暮らしてきました。
「今日、習い事は何時だったっけ?」「明日のお弁当は、何入れてあげようか」そんな何気ない会話の中で、自然と夫婦のつながりを感じていたように思います。
でも、子どもが家を出た瞬間、そうした”共同作業”が一気に終わってしまってしまいました。すると、それまで隠れていた”溝”や”距離感”が、静けさの中であらわになっていきます。
「私たち、何を話せばいいの?」
「休日、一緒にいても何となく気まずい」
「この先ずっと、この人と2人きりで暮らすの?」
そんな風に感じるのは、私だけではないはずです。
■会話が無い=関係が悪い、とは限らない
「最近、会話が減った気がする」子どもがいなうなって改めて気づくのは、夫婦の会話の少なさかもしれません。
でもそれは、必ずしも「関係が冷え込んでいる」というわけではないのです。
私たちは長年、言葉以外でも気持ちを通わせてきました。家に帰り着いたら玄関の電気がついていて、湯気の立ったとご飯がある。
そんな”日常の積み重ね”こそが、言葉以上の信頼の証だったりするのです。
ただ、子供がいないことで、言葉のない時間が妙に目立つようになっただけ。そう思うと「沈黙」に対して少し優しい目で目られるようになりました。
■一緒にいるのに、ひとり。そんな孤独
それでも、寂しさを感じる日があります。夫がいつも通り早い時間に仕事に出かけていき、その後は私は一人、リビングで朝食をとる。
「このまま何年も、こんなふうに時がすぎていくのかな」と不安になることも。
「一緒にいるのに、ひとり」これほどの孤独は、案外、誰にも言えないものです。
子育てで忙しかった頃は「一人の時間が欲しい!」って思っていたのに。
だからこそ「私だけじゃない」と思えることが、大きな救いになります。同じように子育てを終えた友人と話す時間は、想像以上に心をほぐしてくれました。
■第二の夫婦関係を育てなおす
子どもがいた時間は、ある意味で”夫婦のクッション”のような役割をしてくれていました。そのクッションがなくなった今、いよいよ”素の2人”で向き合うときが来たのかもしれません。
「夫婦って、いつからでも育て直せる」最近そう感じるようになりました。
実際に私たちは、少しずつ関係を見直しています。
例えば、週末に一緒に散歩すること。
テレビを見ながら、同じタイミングで笑うこと。
外食に誘ってみること。
「ありがとう」を口に出して伝えること。
最初はぎこちなくても、少しずつ、お互いの”再発見”が始まっていくのです。
■「こんな夫婦になりたかった」を描き直す
正直、子供が巣立ったあとに見えてきた夫婦の姿は、理想とは程遠いものでした。でもそれも「現実」を知る大切なステップ。
そこから「じゃあ、どうなりたいか」を描き直せばいいのです。
・もっと会話をしたい
・旅行に行ける関係でいたい
・お互いに干渉しすぎず、でも思いやりは忘れないでいたい
現想像を言葉にしてみるだけでも、不思議と気持ちは前向きになります。
まとめ
子どもが独立したあとの夫婦関係は、決して”終わり”ではありません。それは「新しい関係が始まるタイミング」でもあるのです。
恋人のような関係には戻れないかもしれない。でも、人生を共に歩む「仲間」としての絆は、年を重ねるほどに深まっていきます。
必要なのは「今まで通り」でなく「これからのかたち」を2人で見つけていこうとする姿勢。
何歳からでも、夫婦は育て直せる。
私たちには、まだまだ可能性がある。
静かになった家の中で、新しい夫婦の時間が、少しずつ、ゆっくりと始まっています。